2017年8月17日

平成29年度 第1回健康増進プログラム企画部会を開催しました


農林水産省「機能性農産物等の食による健康都市づくり支援事業」に係わる平成29年度 第1回健康増進プログラム企画部会を開催しました。
参画企業・団体から、各領域において特に専門的知見を有する方々を委員として招聘し、昨年度の成果と今年度の事業計画の報告を行うとともに、意見交換を行いました。

 
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農水省「機能性農作物等の食による健康都市づくり支援事業」について

  • 「健康な食生活を支える地域・産業づくり推進事業」のうち「機能性農作物等の食による健康都市づくり支援事業」にあたる補助事業であり、地域の機能性農産物を活用して地域の健康課題に取り組む。
  • 最大3カ年計画の今年度は2年目にあたる。
  • 今年度の補助金交付候補者は資料にある7団体あり、うち2団体は新規採択である。また、5月に追加で行われた2次公募の採択を受けたのは本協議会のみであった。

 

平成28年度の成果(参考記事:成果報告会を開催しました

<1>食育健康増進プログラムの策定

  • 福岡県は男性肥満率が約3割であり、メタボリックシンドロームに起因する生活習慣病患者が多いという地域課題を特定
  • 「未利用食材の積極的活用」と「食材機能性から食事機能性へのシフト」という2つの視点から地域の機能性農作物を活用
  • 生産・製造・ブランド化を含めたロードマップとして「企業と連携した商品・メニューの開発」「情報発信や啓蒙活動(食育の推進)」「観光分野との連携によるブランディング」を検討
  • 3年後に機能性農作物を活用した商品メニューの市場規模52億円を目指すという定量的目標を策定

 

<2>地域農作物の機能性を活かした商品・メニュー開発

  • 食事機能性に特化し日々の料理に落とし込みやすいメニュー開発を進めた。
  • 中村学園の大部教授・三堂教授を中心とし、柿・黒大豆・三番茶・トマトを活用した一汁三菜レシピを考案。
  • 惣菜販売会社である株式会社クックチャムプラスシーに協力いただき、実店舗にて販売。西日本新聞にて取り上げられ、事務局に問い合わせの電話がかかる等話題となった。

 

<3>開発した商品・メニューの効果の検証

  • 開発した一汁三菜メニューを弁当にし、被験者30名に平日の昼食のみ3週間喫食。
  • 喫食実験前後に採血・尿検査・エコー・MRI検査を実施し、検証を行った。
  • 結果、総脂肪面積は全被験者の平均値で、4.7%の減少が見られた。このうち内臓脂肪面積は全被験者の平均値で、8.4%の減少。皮下脂肪面積は2.8%の減少が見られ、皮下脂肪の減少に比して、内臓脂肪を効率的・効果的に減少させることが見て取れた

 

平成28年度に確認した課題

クックチャムプラスシーでの総菜販売を通し、生産(一次産業)・加工(二次産業)・販売(三次産業)における課題が明らかになりました。

1.柿の出荷率は91%であるが、集荷に上ってこない未利用柿が非常に多い
2.柿は通年利用ができず、旬の時期を過ぎると冷蔵柿や冷凍柿として価格が3~4倍に跳ね上がる
 →三次産業においては柿の調達時期と調達価格の問題解決が必須。
3.水溶性ペクチン粘性により皮むきがしづらく、種取りにも時間がかかるため加工がしづらい

以上の観点から、保管技術(冷蔵・冷凍・解凍・パッケージ)・加工技術(水溶性ペクチン粘性の対処・皮むき等の下処理・カキタンニンの抽出方法の確立)の向上が二次産業において求められます。

 

成果報告を踏まえ、委員より「700kcal程度の弁当を摂取したとのことだが、被験者が元々摂取していたエネルギー量が分からず、カロリー制限によって減少したのではないかとも考えられるため、特産物によって効いたとは、この試験デザインでは必ずしも言い切れないように思う。」との意見がありました。

協議会事務局からは「被験者が普段摂取しているエネルギー量については、事前に全被験者に対し食事調査を行い摂取カロリーの把握を行った。ただ、昨年度の実験では、ピンポイントで柿の機能性成分が効いたかどうかは分からないため、後ほど説明する平成29年度の取り組みにて、より深掘りした実証実験を行う予定であり、試験デザインの精度をあげていきたく、是非ご協力いただきたい。」と回答がありました。

 
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平成29年度の取組内容

<1>地域農作物の機能性を活かした商品・メニュー開発

  • 昨年度開発したメニューを「市場展開向け」「施設等向け」「一般消費者向け」にブラッシュアップしていく。
  • 加工品の開発、また既にある加工品を各レシピに活用していきたい。これまで旬の時期にしか利用できなかった柿が通年で使用されることとなり、生産・消費の拡大が見込まれると共に、加工品を上手に利用することで調理者の手間が省ける可能性も高い。
  • 昨年度の協議会の中で「コロッケソース」が紹介された。規格外で出荷できない柿を利用し、砂糖やカラメルといった甘味成分を「完熟柿」の自然な甘さに置き換え、原材料のうち約25%使用している。現在は製造を中止しているとのことで、一番食品株式会社とともに復活を試みたい。
  • 柿の未利用食材として「規格外品」や「摘果柿」の問題がある。「規格外品」を加工品や食材として積極的に活用、また「摘果柿」は機能性成分「カキタンニン」の含有率が高いとされることから、その成分抽出・実証用として利用することで未利用食材の減少へと繋がっていくと考えている。

今後、協議会発の様々な商品化・普及をしていきたいと考えており、本協議会のハブとしての役割を強化させていきたいと考えています。

 

<2>習慣化を促すプログラム化の取組について

今年度はパイロットファームとして、うきは市学校給食での導入を予定しています。
導入の視点としては以下2点が挙げられます。
 
①地産地消の一環
中長期的な視点から、幼少期より柿料理が身近にある経験をすることで、一般家庭においても柿を料理の材料する風土が根付いていくことが期待され、より身近なものとして浸透させていくことができる。
また、文部科学省等の議論においても、学校給食の役割は 「地域の文化や伝統に対する理解と関心を深める」ことが含まれている。
 
②メタボ予防の観点
福岡県における11歳時点の肥満傾向は9.76%と、約10人に1人が小学生時点においてメタボであるとされている(平成28年度文部科学省学校保健統計調査より)。
学童期の肥満は成人期の肥満に移行しやすいとされており、メタボリックシンドロームになってからではなく、予防という観点からも導入する意義がある。

 

導入にあたって、栄養士等へのセミナーを開催し、機能性農産物の効果効能やメニューについて周知し地域への浸透を図ります。また、学校給食等への導入時に、子供たち・保護者・栄養教諭等へ効果的なリーフレット等を制作し、機能性農産物の効果効能の理解を深めてもらうとともに一般家庭でも家庭料理の1つとして取り入れてもらうような工夫をします。さらに、子どもたちや栄養士、給食事業者へアンケート調査を実施し、開発した食品やメニューのブラッシュアップを行うと共に、さらなる習慣化を図るための施策を検討していきます。

また、今年度は情報誌の作成も考えています。本協議会のこれまでの取り組みと成果に加え、一般家庭においても調理することできるレシピ等をまとめる予定です。レシピについては、単に調理方法を掲載するだけではなく、機能性農作物の効果などについてもわかりやすく解説し、広く一般への周知を図ります。

 

<3>機能性表示食品の届出のためのエビデンス整理について

今年度は、柿に含有する機能性成分「カキタンニン」に注目し、消費者庁へ機能性表示食品への届出を目指すべく、実証実験を行います。
未成熟柿からカキタンニンを抽出し、食品に添加して被験食とする予定です。
水溶性のカキタンニンがアセトアルデヒドと結合して不溶化することで、渋みを感じなくなることが知られており(脱渋)、不溶化したカキタンニンは脂肪を結びつけて排出されるのではないか考えられています。

 

今年度の事業計画を踏まえ、委員からは以下の意見が出されました。

 

  • 「太らないスイーツ」など意外性のあるブランディングができる商品を開発してはどうか?
  • 柿のジュースが開発できないか?
  • 開発する商品は機能性だけでなく、美味しさも追及してほしい。
  • 少子化により市場規模が縮小する中で、学校給食ばかりに拘らなくてもよいのではないかと思う。一般家庭でも料理をする時間が減っていることを鑑みると、今後、大きく展開させていくのであれば、中食の会社様との提携・取り組みが必須ではないか。
  • うきは市の学校給食に出すことで、その地域に根付き、家庭でも食されるようになることを期待するのか。もしくはその先に、うきはの柿は健康機能があって、全国的にブランドとして展開していく下地作りとしたいのか、どちらなのか。現在爆発的に売れているヨーグルトの例をあげれば、インフルエンザに効くということで話題になり一気に火が付いた。同じように、今回の実験や学校給食への導入も話題となれば、一気にブランド化が進むと思われる。

 
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協議会事務局では、これらの意見を踏まえ、さらに精度を高めたいと考えています。

本協議会会長の甲斐の「未利用柿の活用について話をしてきたが、様々な未利用食材について言えることである。限られた資源をうまく利用していく方法を見つけていきたい。いかに資源として利用していくかが大切だと考える。」という言葉で本会は締めくくられました。

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