農林水産省「機能性農産物等の食による健康都市づくり支援事業」に係わる平成29年度 第1回健康増進プログラム企画部会を開催しました。
参画企業・団体から、各領域において特に専門的知見を有する方々を委員として招聘し、昨年度の成果と今年度の事業計画の報告を行うとともに、意見交換を行いました。
農水省「機能性農作物等の食による健康都市づくり支援事業」について
平成28年度の成果(参考記事:成果報告会を開催しました)
<1>食育健康増進プログラムの策定
<2>地域農作物の機能性を活かした商品・メニュー開発
<3>開発した商品・メニューの効果の検証
平成28年度に確認した課題
クックチャムプラスシーでの総菜販売を通し、生産(一次産業)・加工(二次産業)・販売(三次産業)における課題が明らかになりました。
1.柿の出荷率は91%であるが、集荷に上ってこない未利用柿が非常に多い。
2.柿は通年利用ができず、旬の時期を過ぎると冷蔵柿や冷凍柿として価格が3~4倍に跳ね上がる。
→三次産業においては柿の調達時期と調達価格の問題解決が必須。
3.水溶性ペクチン粘性により皮むきがしづらく、種取りにも時間がかかるため加工がしづらい。
以上の観点から、保管技術(冷蔵・冷凍・解凍・パッケージ)・加工技術(水溶性ペクチン粘性の対処・皮むき等の下処理・カキタンニンの抽出方法の確立)の向上が二次産業において求められます。
成果報告を踏まえ、委員より「700kcal程度の弁当を摂取したとのことだが、被験者が元々摂取していたエネルギー量が分からず、カロリー制限によって減少したのではないかとも考えられるため、特産物によって効いたとは、この試験デザインでは必ずしも言い切れないように思う。」との意見がありました。
協議会事務局からは「被験者が普段摂取しているエネルギー量については、事前に全被験者に対し食事調査を行い摂取カロリーの把握を行った。ただ、昨年度の実験では、ピンポイントで柿の機能性成分が効いたかどうかは分からないため、後ほど説明する平成29年度の取り組みにて、より深掘りした実証実験を行う予定であり、試験デザインの精度をあげていきたく、是非ご協力いただきたい。」と回答がありました。
平成29年度の取組内容
<1>地域農作物の機能性を活かした商品・メニュー開発
今後、協議会発の様々な商品化・普及をしていきたいと考えており、本協議会のハブとしての役割を強化させていきたいと考えています。
<2>習慣化を促すプログラム化の取組について
今年度はパイロットファームとして、うきは市学校給食での導入を予定しています。
導入の視点としては以下2点が挙げられます。
①地産地消の一環
中長期的な視点から、幼少期より柿料理が身近にある経験をすることで、一般家庭においても柿を料理の材料する風土が根付いていくことが期待され、より身近なものとして浸透させていくことができる。
また、文部科学省等の議論においても、学校給食の役割は 「地域の文化や伝統に対する理解と関心を深める」ことが含まれている。
②メタボ予防の観点
福岡県における11歳時点の肥満傾向は9.76%と、約10人に1人が小学生時点においてメタボであるとされている(平成28年度文部科学省学校保健統計調査より)。
学童期の肥満は成人期の肥満に移行しやすいとされており、メタボリックシンドロームになってからではなく、予防という観点からも導入する意義がある。
導入にあたって、栄養士等へのセミナーを開催し、機能性農産物の効果効能やメニューについて周知し地域への浸透を図ります。また、学校給食等への導入時に、子供たち・保護者・栄養教諭等へ効果的なリーフレット等を制作し、機能性農産物の効果効能の理解を深めてもらうとともに一般家庭でも家庭料理の1つとして取り入れてもらうような工夫をします。さらに、子どもたちや栄養士、給食事業者へアンケート調査を実施し、開発した食品やメニューのブラッシュアップを行うと共に、さらなる習慣化を図るための施策を検討していきます。
また、今年度は情報誌の作成も考えています。本協議会のこれまでの取り組みと成果に加え、一般家庭においても調理することできるレシピ等をまとめる予定です。レシピについては、単に調理方法を掲載するだけではなく、機能性農作物の効果などについてもわかりやすく解説し、広く一般への周知を図ります。
<3>機能性表示食品の届出のためのエビデンス整理について
今年度は、柿に含有する機能性成分「カキタンニン」に注目し、消費者庁へ機能性表示食品への届出を目指すべく、実証実験を行います。
未成熟柿からカキタンニンを抽出し、食品に添加して被験食とする予定です。
水溶性のカキタンニンがアセトアルデヒドと結合して不溶化することで、渋みを感じなくなることが知られており(脱渋)、不溶化したカキタンニンは脂肪を結びつけて排出されるのではないか考えられています。
今年度の事業計画を踏まえ、委員からは以下の意見が出されました。
協議会事務局では、これらの意見を踏まえ、さらに精度を高めたいと考えています。
本協議会会長の甲斐の「未利用柿の活用について話をしてきたが、様々な未利用食材について言えることである。限られた資源をうまく利用していく方法を見つけていきたい。いかに資源として利用していくかが大切だと考える。」という言葉で本会は締めくくられました。